僕は爆音で音楽を聴くのが好きだ。ヘッドフォンから音漏れしてしまう程に突き抜ける音が気持ちよかった。
小学校の頃、僕が初めてアイポッドを買い与えられたとき、「あまり大きい音を出すと耳が聞こえなくなるからね」と脅されたことを僕は鮮明に覚えていて、音楽に浸るときはいつもそれを思い出した。
それが本当なのかどうか、僕は知らない。調べようとも思わない。
聴力を担保に得られる快感。
自分の何かを犠牲にしている感覚。
それがたまらなく心地よかった。快かった。ああ楽しさってこういうことかと実感できた。
自分を消耗しなければ得られないはずのそれを手に入れられていると、そう錯覚するのが好きだった。
もし僕の耳が聞こえなくなったらどうしようか、とも考える。
その後悔想像を肴にして、僕は今日も音楽を聴く。聞こえなくなるまで音楽を聴く。耳ぶっ壊れてもいーやぐらいの勢いで音楽を聴く。
それは、とてもしあわせだ。
© 2008- 乙瀬蓮